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乱読のかけら (2022年11月​)

侍、王国への道、愛と狂瀾のメリークリスマス、「外国人差別の現場、叩かれるから 乱読のかけら (2022年11月​) 侍 遠藤周作 新潮文庫(2020年6月25日発行)慶長遣欧使節の支倉常長をモデルにした小説ですが、通訳として同行した宣教師の野心や心の動きの方が興味深かったです。聖職者として日本人の魂を救いたいという願いと、それを実現するために自分が日本の宣教を担う長になりたいという上昇志向が面白かったです。 王国への道 遠藤周作 新潮文庫(2019年8月5日発行)山田長政が日本からアユタヤに渡り、日本人の傭兵隊長からタイの南部の藩王になり、失脚するまでの人生を、日本人バテレンの波乱の人生を絡ませながら描いた歴史小説です。東南アジア在留邦人の大先輩の山田長政の足跡がフィクションでも辿れたことはよかったです。 愛と狂瀾のメリークリスマス 堀井憲一郎 講談社現代新書(2017年10月20日発行・初版)タイトルを見た時、現代日本のクリスマスについての社会学的分析と思ったのですが、キリスト教にクリスマスが導入された経緯から始まって、戦国時代末期の日本でのカトリック教会でのクリスマス、そして明治、大正、昭和のクリスマスと目から鱗の歴史書でした。 外国人差別の現場 安田浩一、安田菜津紀 朝日新書(2022年6月30日発行・初版)読んでいて辛くなる本です。善良な人の国・日本にも、外国人を虐待し、食い物にする人がいるだけでなく、入管という役所、日本の法律が外国人を犯罪者として扱い、弱い立場の外国人に、死を含む苦痛を与え続けていることを知り、愕然としました。改善を望みます。 叩かれるから今まで黙っておいた『世の中の真実』 ひろゆき 知的生きかた文庫(2022年6月5日発行・初版)納得できることがたくさん書かれています。特に納得したのは、コロナの感染防止対策に政府もマスコミも満員電車に乗るのを止めようと言わなかったのはおかしいということです。また真面目に努力していれば成功するという事実はないということも納得もしました。 さくら日和 さくらももこ 集英社文庫(2011年6月6日発行)読み始めた時、著者の日常を書いたつまらない本と思いましたが、読んでいくうちに、結構面白くなってきて、さくらももこさんって面白い!と思うようになってしまいました。彼女のお父さんの言動がかなり変わっていて面白いし、幼稚園児の息子も普通なのに面白いです。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ!Tel: +603-5638 3001info@sakura.net.myhttp://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年10月​)

大戦略論、ブッダ最後の旅、レヴィー=ストロース、株価暴落、鉄道ビジネスから世 乱読のかけら (2022年10月​) 大戦略論 ジョン・ルイス・ギャディス 早川書房(2019年2月25日発行)村井章子訳 最近読んだ本の中で、この本ほど真剣に読ませてくれた本はありません。古代から現代に至るまでの人物を戦略という観点から叙述し、分析し、批評したイエール大学の講義をまとめた本です。どうしても内容をきちんと理解したくて、休暇の3日間を費やして読んでしまいました。 ブッダ最後の旅 大パリニッパーナ経 岩波文庫(2009年3月5日発行)中村元訳 仏教の経典というものを初めて読みました。想像していたのとは違い、新約聖書の使徒言行録を読んでいるような感じでした。釈迦の時代に関する予備知識がなくても、当時の人々の状況がよくわかるように書かれていて、原始仏教が生活の座からの教えであることを垣間見たような気がします。 レヴィー=ストロース 吉田禎吾、板橋作美、浜本満著 清水書院(2015年9月10日発行) レヴィー=ストロースの構造主義については、高校生の頃から聞きかじってきて、一応知っているつもりでいましたが、この本を読んで、私の構造主義の理解が間違っていなかったことを確認できました。しかし彼の書いた本を読んでもよく分からないということも分かりました。 株価暴落 池井戸潤 文春文庫(2014年3月10日発行) テレビドラマの「花吹舞が黙っていない」のエピソードの1つのような話だと思いました。銀行の査定、大企業の体質、中小企業の悲哀、とても身につまされる展開でした。それに大型スーパーの爆破事件が絡んで、そちらの真相も知りたいと思わせるエンターテイメント小説です。 鉄道ビジネスから世界を読む 小林邦宏 インターナショナル新書(2022年8月9日発行・初版) 著者は中国のアフリカの鉄道への進出から、世界のビジネスの現状を語り、世界情勢の見えない日本人へ警告を発しています。書いていることのほとんどに同意しますが、東大を出て、住商に勤めて独立し、世界を回ってビジネスをしていることを何度も書いているのが、ちょっと嫌味です。 戦時中の日本 歴史ミステリー研究会 彩図社(2021年8月11日発行・初版) 戦時下にあるウクライナの人たちの生活がどうなっているのかの興味から、日本の戦時中の生活はどうだったのかを知りたくなり、この本を読んでみました。思った通り、戦争中でも人々は働き、給料をもらい、食べて、そして多少の娯楽もあって生きていたことが確認できました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年9月​)

古都、清兵衛と瓢箪・網走まで、世界から猫が消えたなら、銀の匙、しずかな日々、 乱読のかけら (2022年9月​) 古都 川端康成 新潮文庫(2016年11月5日発行) この小説の筋は特におもしろいというものではありませんが、会話に使われている京都弁がなんとも優雅で流麗で、日本語の美しさを際立たせているため、きっと高い評価を得たのだと思います。私も大学4年間京都に住みましたが、この小説のような京都弁は聞いたことがありません。 清兵衛と瓢箪・網走まで 志賀直哉 新潮文庫(2010年8月10日発行) 最近志賀直哉ファンになった私ですが、この本の短編のそれぞれにも驚かされました。日本語が美しく、登場人物の感情の動きと私の感情を重ねることができるので、ついつい物語に引き込まれていきます。また時々登場する昔の汽車や駅の情景は、私には懐しく、大好きなものです。 世界から猫が消えたなら 川村元気 小学館文庫(2015年10月31日発行) 死を宣告された「僕」の心の動きに、私も一緒になって、一喜一憂しました。現実にはあり得ない設定ではありますが、自分の命と引き換えに何かを消していくという選択の難しさ、また何かが消えた時の戸惑いや喪失感がよくわかるので、人の死一般についても考えてしまいました。 銀の匙 中勘助 角川文庫(2010年5月15日発行) 「中勘助の詩から」という合唱組曲を歌ったことがあり、「銀の匙」にはずっと興味を持ってきました。読んでみると、甘ったれた主人公の言動が優しい日本語で綴られ、それが醸し出す雰囲気が、高等遊民の子ども時代という感じなので、夏目漱石から高い評価を受けたのだと思います。 しずかな日々 椰月美智子 講談社文庫(2011年6月1日発行) 子ども時代の体験を、子どもの目線で生き生きと描いた児童文学です。大人が子ども時代を振り返って書いた自伝小説はたくさん読んできましたが、子どもの視点を貫いている小説はあまり読んだことがなかったので、とても新鮮でした。かなり普通でない子どもの体験が書かれています。 大放言 百田尚樹 新潮社(2015年9月15日発行) この人の放言の全てに賛成ではありませんが、ほぼ納得しました。言葉狩りのようなことを必死になって、大真面目にやっている日本は、おかしな国と思います。特に最近のセクハラに関する日本のマスコミや人々の反応は、かなり異常な状況だという主張には私も納得します。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年8月​)

小僧の神様・城の崎にて、阿部一族・舞姫、警視庁文書捜査官、萩を揺らす雨、 乱読のかけら (2022年8月​) 小僧の神様・城の崎にて 志賀直哉 新潮文庫(2020年3月30日発行) この短編集を読んで、志賀直哉の大ファンになりました。志賀直哉の小説がこんなにすばらしかったとは、中学生の頃に読んだ時には全く分かりませんでした。これは完全に大人の視点で書かれた読み物で、子どもが読んでも分からない、大人の心情が的確に描かれています。 阿部一族・舞姫 森鴎外 新潮文庫(2020年6月30日発行) 森鴎外の小説は、ストーリーはすばらしいのですが、古文調のものは私には英語の小説を読むより面倒で、すらすら読み進めることができないので、「舞姫」などはちょっと苦手です。時代物でも「阿部一族」は現代文に近いので、苦労せずに読むことができました。 警視庁文書捜査官 麻見和史 角川文庫(2017年10月30日発行) 文書を解読し、事件を解決する警視庁の部署の女性主任の活躍の物語です。まさに警察テレビドラマのシナリオです。しかし設定はかなりこじつけ、荒唐無稽な展開と感じられなくもありませんが、先の展開が知りたくてハラハラさせられたので、いい小説だと思います。 萩を揺らす雨 吉永南央 文春文庫(2011年11月15日発行) 私の故郷の群馬県高崎市を舞台にしたおばあさん探偵の話です。故郷で、しかも主人公の店のある紅雲町という架空の町の場所を想像できるので、実際に家の近所で起こった事件の話のような気持ちで読みました。しかし設定には少し無理があるような気もしました。 世界を変えた哲学者たち 堀川哲 角川ソフィア文庫(2012年2月25日発行・初版) 哲学の本にしてはとても読みやすい本でした。古代や中世の哲学者の話ではなく、すべて近現代の哲学者の話で、近現代史にどのようにそれらの哲学者が影響を与えたかが書かれています。その中でも私はヴィトゲンシュタインの生き方にとても惹かれました。 エレミヤ書を読もう 左近豊 日本キリスト教団出版局(2018年8月25日発行・初版) コロナ禍で世界中の人々が苦しむ中、エレミヤ書が描く古代イスラエルの歴史は現代に生きる私たちに何かの示唆を与えてくれるのではと思い、数年前に書かれたこの本を読んでみました。ユダヤ民族の苦難の中で、神の言葉を叫び続けたエレミヤの苦悩がよく分かりました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年7月​)

『アジア人』はいかにしてクラシック音楽家になったのか?、オランダ宿の娘、自 乱読のかけら (2022年7月​) 『アジア人』はいかにしてクラシック音楽家になったのか? 吉原真里 アルテスパブリッシング(2013年10月30日発行・初版) 私が興味を持ってきた課題を、インタビューの記録を中心に、ドキュメンタリー風に解説してくれた本です。あえて言えば、ヨーロッパで活躍するアジア人の情報が少ないこと、著者に日本の邦楽についての知識が欠如していること、時々自分の自慢が入るのが残念でした。 オランダ宿の娘 葉室麟 文春文庫(2022年3月10日発行・初版) オランダ人御用達の宿の娘たちの視点というより、彼女たちを含めたオランダ人関係者の視点から、当時の日本と世界の状況が描かれ、小気味よいテンポでストーリーが展開していきます。ただ帯の宣伝文句の「若者たちの熱い恋」がどこに書かれていたのかはわかりません。 自転車泥棒 呉明益 文春文庫(2021年9月10日発行・初版)天野健太郎訳 台湾人の著者が中国語で書いた本の翻訳です。おもしろいです。そして古い自転車を収集するオタクの心理の分析、日本の台湾の植民地支配、その後の国民党支配、日本のアジア侵攻、台湾の山岳民族の問題などを、登場人物たちの体験として描いているのが素晴らしいです。 いまひとたびの 志水辰夫 新潮文庫(2020年3月1日発行・初版) 志水辰夫という小説家を知りませんでしたが、この本を読んで、とても丁寧に情景と人の心を描写し、かつよいストーリーを書く人だと思いました。短編小説のよさである、この先を知りたい、もっと読みたいと思える作品ばかりがこの短編小説集に集められていました。 女のいない男たち 村上春樹 文春文庫(2022年2月15日発行) やっぱり村上春樹はすごいです。この短編小説集にある物語のストーリー自体は決して極上とは言えませんが、村上春樹の文章が私を惹きつけ、読ませてしまいます。そして読み終わると、何か新しい思想や哲学が書かれていたのではないか、と感じるのが不思議です。 倫敦塔・幻影の盾 夏目漱石 新潮文庫(2016年11月10日発行) きっと夏目漱石は明治時代の村上春樹だったのでしょう。残念ながら、私にはこれらの短編小説がフィットしません。その理由は、題材に共感しにくいことと、日本語なのに、意味の分からない単語があり、英語の小説を読むような感じになってしまうためだと思います。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年6月​)

エリートと教養、日本の花、鏡のなかのアジア、カルピスを作った男・三島海雲、 乱読のかけら (2022年6月​) エリートと教養 村上陽一郎 中公新書ラクレ(2022年2月10日発行・初版) タイトルや帯の宣伝文句と本の内容が必ずしも一致してはいませんが、著者と私の興味の対象が極めて近いことを発見しました。もちろん東大の名誉教授の知識に私の知識は及びま 日本の花 柳宗民 ちくま新書(2006年4月5日発行) 著者は柳宗悦の四男の園芸研究家です。私は「撮り花」を30年近くやっていて、マレーシア、日本、アメリカ、シンガポール、インド、ベトナム、ブラジル、ドイツ、フランス、オーストリア、オランダで花の写真を撮ってきました。この本にある日本の花もほとんど知っていました。 鏡のなかのアジア 谷崎由衣 集英社文庫(2021年7月20日発行・初版) アジアを題材にした短編小説集、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作ということで、読んではみたものの、私にはストーリー性の欠如した駄作短編小説集にしか感じられませんでした。クアラルンプールを舞台にした小説も全くクアラルンプールの香りがしませんでした。 カルピスを作った男・三島海雲 山川徹 講談社文庫(2022年1月20日発行・初版) カルピスがモンゴルの乳製品から生まれたということ、関東大震災の時に、火事で焼き出された喉の渇いた被災者にカルピスが配られたことなど、興味深い事実を知ることができました。最近マレーシアのスーパーでカルピスをほとんど見かけないことを残念に思います。 白い人、黄色い人 遠藤周作 新潮文庫(2020年6月5日発行) 最近、遠藤周作の小説を少しずつ読んでいますが、この2編はカトリック作家遠藤周作の面目躍如と言うべき小説だと思いました。私は日本人でクリスチャンであることにあまり矛盾を感じずに生きてきましたが、遠藤周作は矛盾を感じ、挑戦してきたのだと感じました。 文豪たちの友情 石井千湖 新潮文庫(2021年9月1日発行・初版) 著者は人の噂が大好きな、所謂ビージー・ボディだと思いました。私にはどうでもいいことでも、この人には面白いと感じるようです。有名人のプライバシーは制限されるのかもしれませんが、明らかに格好の悪いことまで書き連ねるのは、あまりよくないと思いました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年5月​)

神曲、母恋旅烏、手長姫・英霊の声、小説読本、わが青春の台湾、わが青春の香港 乱読のかけら (2022年5月​) 神曲 川村元気 新潮社(2021年11月20日発行・初版) 歌うカルト集団に入り込んだ夫婦と娘の話です。物語としての構成はきちんとしているし、登場人物の輪郭もはっきりしているのですが、カルトの組織や活動がぼやけていて、カルトの恐ろしさ、特にカルトの指導者たちの野望や悪意が描かれていないのが残念でした。 母恋旅烏 荻原浩 双葉文庫(2019年7月14日発行・初版) 旅芸人の家族の次男として生まれた、少し知恵遅れの青年がメインの語り手になって、家族の仕事や生活の泣き笑いの日々を描いたホームドラマ的小説です。ストーリーは面白いのですが、登場人物の中に、自分を重ね合わせ、共感できる人が見つかりませんでした。 手長姫・英霊の声 三島由紀夫 新潮文庫(2020年11月1日発行・初版) 9編の短編小説が入った本です。表題の2編はそれなりに面白く、また三島由紀夫の文体の素晴らしさも堪能することはできたのですが、それ以外はさらっと読んで終りの所謂短編小説でした。三島由紀夫はやはり長編小説に本領が発揮されているように思いました。 小説読本 三島由紀夫 中公文庫4(2016年10月25日発行・初版) 小説の書き方、小説の読み方、三島由紀夫が推薦する小説の紹介が、1冊にまとめられています。小説は、芸術の中で特に自由な創作が許されているジャンルで、1つの確立した方法論はないと繰り返し主張されているところに、三島由紀夫の独自性と自由を感じました。 わが青春の台湾、わが青春の香港 邱永漢 中公文庫(2021年5月25日発行・初版) 親戚のおじさんの昔話を聞くような感じでこの本を読みました。苦労話や運の良かったことなど、激動の時代の中で、国境を越え、たくましく生きた邱永漢の若い日々に共感しました。しかし東大出であることが何度も書かれていることには少しうんざりしました。 老人支配国家・日本の危機 エマニュエル・トッド 文春新書(2021年11月20日発行・初版)磯田道史他訳 この本はタイトルと内容が一致していません。しかし日本の現在の問題点を指摘する人口学者の論点には納得すべきことが多く、実際にコロナ禍前に書かれた将来予測がそのまま当たっている部分もあり、人口という観点から社会を見ることの重要性を感じました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年4月​)

地上で僕らはつかの間きらめく、いつもの言葉を哲学する、太陽と鉄、献灯使、あ 乱読のかけら (2022年4月​) 地上で僕らはつかの間きらめく オーシャン・ヴオン オーシャン・ヴオン新潮クレスト・ブックス (2021年8月25日発行・初版)木原善彦訳 原作が悪いのか、翻訳が悪いのか、どちらのせいか分かりませんが、何が書いてあるのかがよくわからない部分が大半を占めている本でした。著者がベトナム系アメリカ人の詩人なので、どれだけ美しい詩が読めるのだろうかと期待したら、意味不明の言葉だらけでした。 いつもの言葉を哲学する 古田徹也 朝日新書 (2021年12月30日発行・初版) 言語哲学者がここまで来たか!と感動しました。言語哲学の本は、哲学の中でも最も理屈っぽく、難解極まりないのが普通ですが、この著者は誰もが分かる言葉で、言語の問題を説明しています。言語哲学の本来のあるべき姿がこの著書によって実現されているようです。 太陽と鉄 三島由紀夫 中公文庫 (2015年8月20日発行) 2つのエッセイが収められた本ですが、「太陽と鉄」の方は哲学的、形而上学的、抽象的すぎて何が書いてあるのか理解できませんでした。「私の遍歴時代」は実に明快で、天才三島由紀夫の若き日の修業時代がよく分かりました。しかし巻末の解説が一番よかったです。 献灯使 多和田葉子 講談社文庫 (2020年6月4日発行) 「献灯使」は荒唐無稽、理路不整然、これほど読み終えるのに苦労した小説も珍しいです。その他の短編小説も何が書いてあるのかよくわかりませんでした。どうしてこういう本が出版され、さらには英語に翻訳され、全米図書賞まで受賞したのでしょうか。不思議です。 あのポプラの上が空 三浦綾子 講談社文庫 (2021年6月15日発行・新装版初版) 札幌で薬局と病院を経営する家に居候をした東京出身の青年の物語です。不思議な人たちが構成する家族の中で、青年が奇妙な出来事に出会い、成長していく様子が描かれています。小説は荒唐無稽すぎない方が安心して読めるので、この本を読んでホッとしました。 母 三浦綾子 角川文庫 (2017年3月20日発行) プロレタリア作家の小林多喜二の母が語り手となって、自身と多喜二の人生を描いた小説です。私は小学校6年生の時に「小林多喜二」という映画を見て、息苦しい思いを感じたことを覚えています。日本も貧しく、暗い時代があったことを忘れるべきではないと思います。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年3月​)

平和とは何か、清貧の思想、神の国と世界の回復、僕たちが何者でもなかった頃の 乱読のかけら (2022年3月​) 平和とは何か W.ブルッゲマン 教文館(2018年9月30日発行・初版) 小友聡・宮嵜薫訳 この本は、いわゆる現代の世界の戦争と平和の平和論ではなく、聖書が描く様々な平和の記述と教会の状況から平和とは何かを探り、かつ私たち自身に平和を創造する者として何をなすべきかを問い掛けている本です。聖書や教会に関する知識のない人には読みにくい本かもしれません。 清貧の思想 中野孝次 草思社 (1993年9月17日発行) 清貧は私の最も理想とする生き方でありながら、現実には全く実践できていません。心では清貧に生きたいと願いつつ、暴飲暴食をし、ブクブク太っている私です。日本の伝統の中に、清貧の思想があり、多くの偉人たちが清貧に生きたことを知り、改めてその人たちに習いたいと思いました。 神の国と世界の回復 稲垣久和編 教文館 (2018年9月30日発行・初版) 私は賀川豊彦のことを語る説教を聞いて、キリスト教に入信しましたが、賀川豊彦自身のことはあまり知りませんでした。この本には賀川豊彦が大正、昭和の日本で貧困に苦しむ人たちの救済のために、社会運動を通して、神の国を日本で実現しようとした歴史が中心に書かれています。 僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう 山中伸弥他 文春文庫 (2017年5月15日発行) 山中伸弥、羽生善治、是枝裕和、山極壽一の4人の講演と永田和宏との対談を記録した本です。それぞれに分野の頂点を極めた人たちが、頂点を極める前の若い頃の話はとても意外でした。この本は若い人にぜひ読んでもらい、将来、ある分野の頂点を極めて欲しいと願っています。 日本二千六百年史 大川周明 毎日ワンズ (2017年11月25日発行) 大川周明は東京裁判で頭がおかしくなって東條英機の頭を叩いた右翼の思想家というイメージしかありませんでしたが、この本を読んで、実は素晴らしい歴史家であることが分かりました。こんな装丁ではなく、内容に相応しい、もっと格調高い装丁でこの本を売るべきだと思います。 万葉集から古代を読みとく 上野誠 ちくま新書 (2017年5月10日発行・初版) 万葉集は中学生、高校生の頃に夢中になり、数百首を暗誦していました。暗誦と言っても、犬養孝先生の犬養流の詩吟のような読み方で歌って覚えていました。この本を読んで、万葉集の研究が40年間にかなり進んだということが分かり、また万葉集を読んでみようと思いました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my