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乱読のかけら (2023年7月​)

旅する力、初湯千両、千年樹、すごい!ホメ方、人間の浅知恵、君たちはどう生きるかの哲学 乱読のかけら (2023年7月​) 旅する力 沢木耕太郎 新潮文庫(2015年4月25日発行) 「深夜特急」の創作ノートであり、沢木耕太郎の若い頃を描いた自伝です。「深夜特急」は普通の日本人が貧乏旅行を始めた頃の貴重な記録だと思いました。同時代の多くの人がやってみたいと思いながら、ほとんどの人がやらなかった旅行の姿が書かれています。 初湯千両 浅田次郎 集英社文庫(2005年7月3日発行) 昔の東京の下町言葉とそこで使われていた語彙を駆使した、落語の語りよりも漢字が多い文章がそれぞれの短編の内容にぴったり合っています。私の世代の読者なら、まだ記憶の中にある、少し煤けた、モノクロ映像のような日本の姿が少し悲しく描かれています。 千年樹 荻原浩 集英社文庫(2010年3月23日発行・初版) 荻原浩が木を主人公にして、しかし木の周囲の人間にのみに語らせ、1000年の時間を描いた小説です。それぞれのエピソードがそれなりに面白いのですが、その後、どうなったのかと知りたくなる終わり方をしているので、読者の想像に任せず、書いて欲しかったです。 すごい!ホメ方 内藤誼人 廣済堂文庫(2010年2月20日発行) 書いてあることはほとんど納得、しかし何も目新しい発見のない本でした。この本を読んで新たな発見がたくさんあった人は、今まで希薄な人間関係しか持ってこなかったのではないでしょうか。この本の凄さは理論を外国の著作で裏付けているところだと思います。 人間の浅知恵 徳岡孝夫 新潮新書(2013年8月20日発行・初版) 毎日新聞の元記者の著者が自分の経験を振り返って書いたエッセイ集です。著者は私の父と同い年ですが、この本に書かれている内容は、私の人生と重なっているので、自分が生きてきた歴史の再確認をさせてくれた、というか歴史の裏側を知らせてくれた本でした。 君たちはどう生きるかの哲学 上原隆 幻冬舎新書(2018年8月30日発行・初版) 吉野源三郎の「君たちはどう生きるのか」は中学生の頃に読んだことがありますが、この本を読んで、60歳を超えた今、もう1度読んでみたいと思いました。またこの本の、実はメインのテーマである鶴見俊輔の哲学、思想に関する著作も併せて読みたくなりました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年6月​)

蜩ノ記、人間にとって成熟とは何か、アジアごはん 絶対に食べたい『一皿』、アメリカ 乱読のかけら (2023年6月​) 蜩ノ記 葉室麟 祥伝社 (2011年11月10日発行・初版) 江戸時代のとある藩の事件を描いた小説です。設定が地味で、華やかさがないので、退屈な始まりでしたが、読み進めていくと、リーゾナブルに面白く話が展開して行くので、切腹の運命にある侍が赦されて欲しいという願望を抱いて、最後まで読んでしまいました。 人間にとって成熟とは何か 曽野綾子 GS幻冬舎文庫 (2013年10月30日発行) クリスチャンである曽野綾子が偉そうに人生論を語り、世間の人々に説教を垂れている、と感じられる、後味の悪い本でした。同じクリスチャンとして、極めて遺憾な、いわゆる残念な本です。こんな本がベストセラーになったのは何故なのでしょうか? アジアごはん 絶対に食べたい『一皿』 酒井美代子、高野たけし 王様文庫 (2002年6月20日発行・初版) 20年以上前に発行されたアジアの食紀行です。私の体験と重なる部分が多く、ほぼ同感と感じる本でした。取り上げられている場所の中で、ミャンマー、ブータン、ラオスはまだ行ったことがないので、機会があれば行って、その土地の一皿を食べてみたいと思いました。 アメリカの海軍に学ぶ『最強のチーム』のつくり方 マイケル・アブラショフ 知的生きかた文庫 (2016年9月10日発行)吉越浩一郎訳 ハウツー物の本なのに、吉村昭の小説を読んでいるようで、実に面白く、しかもハウツー物としての役割を立派に果たしている、私にとっては近年稀なるヒットの本でした。翻訳がうまいのだと思いますが、自慢話が鼻につかず、納得でき、ぜひ学びたいと思える本でした。 和辻哲郎 小牧治 清水書院 (2015年9月10日発行) 和辻哲郎の人物と思想と哲学を解説した本です。私は和辻哲郎の著書を部分的にしか読んだことがなかったので、日本的哲学の提唱者としか思っていなかったのですが、かなり政治的なところもあり、戦後に自説を変えるなど、色々あった人だということが分かりました。 流浪の月 凪良ゆう 創元社文庫 (2022年2月25日発行・初版) 人の性の多様性とそれを理解しない日本の社会と人々の中での葛藤が、現代の日本の文脈の中で実にリアルに描かれている小説です。もし私がこの小説の中の登場人物の1人なら、主人公が好意を寄せた男性のことを理解することができるかどうかは分かりません。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年5月​)

格安エアラインで世界一周、光あるうちに、日蝕、食通知ったかぶり、家族写真、妻 乱読のかけら (2023年5月​) 格安エアラインで世界一周 下川祐治 新潮文庫(2009年7月1日発行・初版) LCCが日本にも就航し始めた頃に、LCCをできるだけ利用して世界一周した人の旅行記です。観光はほとんどせず、旅行の前に予約もせず、旅の途中で飛行機を予約し、ただ安い飛行機で世界一周をすることを目的とした旅行というものの意味が私には理解できません。 光あるうちに 三浦綾子 新潮文庫(2006年12月25日発行) 三浦綾子が書いたキリスト教入門書です。三浦綾子の小説は素晴らしいですが、このキリスト教解説本に書かれていることは、私とはかなり違った信仰、考え方で、もし現実に彼女に会って信仰の話をしたら、意気投合をすることはなかったろうなあ、と思いました。 日蝕 平野啓一郎 新潮文庫(2005年6月5日発行) 平野啓一郎のデビュー作で芥川賞受賞作品です。中世ヨーロッパのキリスト教を勉強して書いたことはよく分かりますが、視点が、優等生が一所懸命悪ぶっているような感じであることに、物足りなさを感じました。もっと破裂していたら、面白かったのにと思います。 食通知ったかぶり 丸谷才一 中公文庫(2010年2月25日発行・初版) 50年前の日本全国の名店案内です。今、それらの店がどれだけ生き残っているのかに興味があります。酒に関する記述は甘口、辛口ぐらいしかありません。当時は今のような大吟醸などがなく、かなり不味い酒を飲んでいたので、詳しい描写が書けなかったのだと思います。 家族写真 荻原浩 講談社文庫(2015年4月15日発行・初版) どこにでもいるような人のちょっとした体験の短編小説集です。読んでいて親近感を感じる話もあるし、ただ「なるほど」と思うだけの話もありました。私は「住宅見学会」が一番面白いと思いました。ちょっと見ではわからない家族の恥部が見えてしまうのは痛快です。 妻に捧げた1778話 眉村卓 新潮新書(2018年1月20日発行) 奥さんが癌の宣告を受けてから、亡くなるまでの1778日間、毎日1つの話を奥さんのために書いた小説家の話です。引用されている奥さんのために書いた話自体は、それほど面白くはありませんでしたが、著者がそこまで誠実に毎日書き続けたことには感動しました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年4月​)

香港陥落、海の史劇、小泉政権 非情の歳月、失われた地図、日本人が知らない幸福、 乱読のかけら (2023年4月​) 香港陥落 松浦寿輝 講談社(2023年1月11日発行・初版) 演劇の舞台の設定のようないくつかの場面でストーリーが展開し、それぞれの年代の世の中の状況が登場人物を通してうまく表現され、退屈することはありません。しかし人名や食べ物、芸術などに、事実に反することやあり得ないと思われる設定や記述が見え隠れします。 海の史劇 吉村昭 新潮文庫(2004年2月20日発行) 吉村昭のことを「調べて書く作家」と見下した評論家がいましたが、彼ほど調べた史実を生き生きと語れる作家はいないと、この本を読んで再確認しました。日露戦争の日本海海戦前後の歴史を克明に綴ったこの小説は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」と匹敵する史劇本です。 小泉政権 非情の歳月 佐野眞一 文春文庫(2006年8月10日発行・初版) この本で最初に取り上げられている小泉元首相の秘書だった飯島勲さんとは一緒に仕事をしたことがあるので、興味を持って読んでみました。この本には私の知っている飯島さんとはかなり違った飯島さんが登場していて、この著者の小泉政権への悪意を感じました。 失われた地図 恩田陸 角川文庫(2019年8月25日発行・初版) 霊の世界が垣間見える小説です。ストーリーは荒唐無稽のはずなのにイマイチ徹底できず、全般的に平凡で、登場人物にも魅力がなく、気持ちが悪くなるような描写もあり、好きにはなれませんでした。多作の恩田陸の作品の中ではおそらく駄作の1つであると思います。 日本人が知らない幸福 武永賢 新潮新書(2009年9月20日発行・初版) 日本に帰化したベトナム人医師の書いた本です。タイトルと本文は違っていて、本文には「幸福」に関しての記述がほとんどありませんでした。むしろ著者の不幸な生い立ちや不幸な人の話が多く書かれており、何が日本人の知らない幸福なのかはよく分かりませんでした。 宗教を『信じる』とはどういうことか 石川明人 ちくまプリマー新書(2022年11月10日発行・初版) 第一章を読んだ時、「これぞ私の疑問に答えてくれる本だ」と思いました。しかし第二章からは、著者が自ら設定した設問にきちんと答えず、のらりくらりと、古今東西の哲学や神学を引っ張ってきて、回答を試みただけの、見事に失敗した神学の解説書になっていました。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年3月​)

語学の天才まで一億光年、80歳の壁を越える食事術、暗夜行路、田舎の紳士服店の 乱読のかけら (2023年3月​) 語学の天才まで一億光年 高野秀行 集英社インターナショナル(2022年12月10日発行) 最初この本を書店で手に取った時には、語学自慢の話かなあと思ったのですが、読み始めて、若い頃の語学修行の話だとわかり、一気に読んでしまいました。私も翻訳、通訳という語学で飯を食ってきた人間なので、多くの部分に共感し、著者と会って語り合いたいと思いました。 80歳の壁を越える食事術 吉村芳弘 幻冬舎新書(2022年11月30日発行・初版) 今まで読んできたダイエット本、アンチエイジング本とはかなり違った内容の本です。よく食べ、コミュニケーション能力があり、ちょっと小太りの人が長生きする、と言われてみれば、納得することが書かれていました。私も65歳になったら、そうしたいと思います。 暗夜行路 志賀直哉 新潮文庫(2020年9月30日発行) 志賀直哉の短編小説に魅せられ、いよいよ長編のこの本に挑戦しました。短編に比べると歯切れが悪いような気がしますが、やはり「小説の神様」と言われた人だけあって、文章は最高、また日本国内を移動する鉄道の旅の描写が鉄ちゃんの私に懐かしさを感じさせてくれました。 田舎の紳士服店のモデルの妻 宮下奈都 文春文庫(2013年6月10日発行・初版) この本を読んで、30歳から40歳の日本の女性はこのように生き、このように世の中を見、このように楽しみを見出していくのか、ということが分かったような気がしました。しかし私には退屈で、共感を呼ぶストーリーとは言えませんでした。文章が下手なのかもしれません。 かたちだけの愛 平野啓一郎 中公文庫(2018年12月15日発行) 平野啓一郎の小説は映画やテレビドラマになる、とこの本を読んでまた思いました。この人は文章というより、ストーリー展開と登場人物の心の動きの設定が素晴らしいのです。この小説で私は主人公の相良に自分を投影してしまい、1つ1つの出来事に一喜一憂してしまいました。 私の家では何も起こらない 恩田陸 角川文庫(2016年11月25日発行・初版) お化け屋敷のような古い家の不気味な話を集めた短編集というか連作です。それなりに面白くはありますが、私はホラー物が好きではないので、それぞれのストーリーにはそれほど興味をそそられませんでした。この本は恩田陸の小説の中では駄作の方ではないかと思います。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年2月​)

旧友再会、一月物語、星を守る犬、さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記、ユーモア小 乱読のかけら (2023年2月​) 旧友再会 重松清 講談社文庫(2022年6月15日発行・初版) 旧交を温めるということが、60歳を越えてからの私のやりたいことの1つになっています。私の場合、この本のような展開になる前に、旧友への私からのラブコールが無視されたり、拒否されたりすることの方が多く、実は昔、嫌われ者だったのかなあと思うこの頃です。 一月物語 平野啓一郎 新潮文庫(2002年9月1日発行・初版) この小説の古文調の文章は借り物のような感じで、明治の文豪が書いた古文調とはなんとなく違い、違和感を感じました。ストーリーの展開も平野啓一郎の他の小説のように引き込まれていくという感じではなく、なんとなく読み通しただけだったと感じた本でした。 星を守る犬 村上たかし 双葉文庫(2011年6月9日発行) 映画のノベライズ版です。ぜひこの映画を見てみたくなりました。特にこの犬がどういう演技をするのかに興味を持ちました。私も犬と20年間一緒に暮らしたので、オーナーが亡くなってしまった犬の悲しさに共感し、人にとっての犬の存在について考えさせられました。 さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記 井伏鱒二 新潮文庫(1986年9月25日発行) 「さざなみ軍記」は平家物語の時代の設定で、瀬戸内海での源平の戦いを平家の少年の視点で書かれています。「ジョン万次郎漂流記」は、多くの作家が取り上げた人物の伝記の1つですが、ジョン万次郎の学びに対しての作者の思いが好意的に書かれているのがよかったです。 ユーモア小説集 遠藤周作 講談社文庫(2021年3月21日発行) 遠藤周作のユーモアは、私にとってはエロく、ブラックな感じがしました。デヴィ夫人がお風呂でおならをしたことを正直に言った話など、カトリック作家が書く小説というイメージからはかけ離れた内容の短編小説ばかりで、私はあまり好きになれませんでした。 日航スチュワーデス・魅力の礼儀作法 奥谷禮子 亜紀書房(2004年1月31日発行) こういうタイトルの本だと、多くの人にプレゼントに応募してもらえるのではと思い、今回取り上げてみました。昔は飛行機に乗る楽しみの1つがスチュワーデスさんでしたが、今はそういう時代ではないので、彼女たちの礼儀作法はそれほど重要ではないように思います。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2023年1月​)

女ぎらい、空海の思想について、リタとマッサン、上海、容疑者Xの献身、中庭の出来事 乱読のかけら (2023年1月​) 女ぎらい 上野千鶴子 朝日文庫(2018年10月30日発行・初版) 社会構造を男女関係から分析したすばらしい社会学の書です。読んでいて、いちいち納得しましたし、そのような社会にいるほとんどの人が幸福ではないということもよく理解しました。しかし書き方に品がないというか、こういう先生からは習いたくないと思いました。 空海の思想について 梅原猛 講談社学術文庫(1996年10月22日発行) 日本の仏教について、ほとんど知らないので、少し勉強しようと思い、読んでみました。最初はすらすらと読めたのですが、途中から何が書いてあるのかよく分からなくなり、苦労しながら、読み進めました。空海の教えはきっともっと分かりやすかったのだと思います。 リタとマッサン 植松三十里 集英社文庫(2014年10月21日発行) NHKの朝の連続ドラマの「マッサン」のスコットランドの部分を拡大し、その他を端折った本です。マッサンが当時の日本人の中で、傑出した人物であったことがよく分かりますが、ウイスキー作りの細部が描かれていないので、酒飲みとしては足りない気がしました。 上海 佐伯泰英 講談社文庫(2008年4月15日発行・初版) 幕末の上海を舞台にした時代小説です。当時の政治的な背景だけでなく、上海のホテルや日本企業の事務所、イギリス租界、中国人街、航海に使った船についての鮮明な描写によって、激動期の上海がいかにいい意味でも悪い意味でも魅力的な都市だったかがよく分かります。 容疑者Xの献身 東野圭吾 文春文庫(2008年9月5日発行) ガリレオ先生の親友の数学者が、隣の部屋に住む、愛する女性の殺人をかばう為に、緻密で冷酷な行動を起こしていくミステリーです。犯人が誰かを探していく展開ではなく、警察が真相解明をしていく過程が書かれた、通常とは視点が違っている展開の小説です。 中庭の出来事 恩田陸 新潮文庫(2009年8月1日発行・初版) この本を読んで完全に恩田陸のファンになりました。劇中劇が戯曲の形式で書かれているのも新鮮で、劇なのか、劇中劇なのか、読んでいて混乱してくるのもまた楽しく、最後まで気を抜かずに読んでしまいました。ぜひこんな中庭のあるホテルで食事をしてみたいです。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年12月​)

愛と狂瀾のメリークリスマス、十字架、月の上の観覧車、禁断の魔術、本所深川ふし 乱読のかけら (2022年12月​) 愛と狂瀾のメリークリスマス 堀井憲一郎 講談社現代新書(2017年10月20日発行・初版) タイトルを見た時、現代日本のクリスマスについての社会学的分析と思ったのですが、キリスト教にクリスマスが導入された経緯から始まって、戦国時代末期の日本でのカトリック教会でのクリスマス、そして明治、大正、昭和のクリスマスと目から鱗の歴史書でした。 十字架 重松清 講談社文庫(2020年7月8日発行) いじめが原因で自殺をした中学生の残した遺書で親友と名指しされた少年の長年に渡る葛藤と苦悩を描いた小説です。もしかしたら自分がこの少年だったのかもしれないという思いがして、苦しい気持ちになりました。いじめの問題は決して人ごとではないと感じました。 月の上の観覧車 荻原浩 新潮文庫(2017年6月5日発行) 「海の見える理髪店」の作者の荻原浩が書いた感動的な短編小説集です。波瀾万丈な人生を歩んだ英雄の話ではなく、普通の人の人生にも起こるかもしれないと思われる、しかし不思議な出来事が描かれています。この本で荻原浩は私の好きな小説家の一人になりました。 禁断の魔術 東野圭吾 文春文庫(2021年7月30日発行) 政治や裏社会が絡む地方都市の開発という設定の中で、物理学の知識と製造技術を身につけた若者、その恋人、それらをすべてお見通しのガリレオ先生、盛りだくさんの要素が実に精緻に正確に絡み合う物語です。その構成と結末はまさに天才・東野圭吾の小説です。 本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき 新潮文庫(2012年7月15日発行) 江戸の事件物の短編集です。どれもきちんと落ちがあり、構成もしっかりしていて、事件の真相を考えながら読める、すばらしいエンターテインメント歴史推理小説です。江戸の人々の生活や思考も生き生きと描かれていて、このままで時代劇のドラマになる内容です。 日本人だけが知らない『本当の世界史』(中世編) 倉山満 PHP文庫(2022年6月16日発行・初版) このようなタイトルに弱い私は、読んで失望、ということが多いのですが、やはりこの本にも失望しました。何か新しい歴史的な事実が書かれている訳でもなく、日本史と世界史を行ったり来たりしながら、ごちゃごちゃに歴史を書き連ねているだけの暇つぶし本でした。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ! Tel: +603-5638 3001 info@sakura.net.my http://www.sakura.net.my

乱読のかけら (2022年11月​)

侍、王国への道、愛と狂瀾のメリークリスマス、「外国人差別の現場、叩かれるから 乱読のかけら (2022年11月​) 侍 遠藤周作 新潮文庫(2020年6月25日発行)慶長遣欧使節の支倉常長をモデルにした小説ですが、通訳として同行した宣教師の野心や心の動きの方が興味深かったです。聖職者として日本人の魂を救いたいという願いと、それを実現するために自分が日本の宣教を担う長になりたいという上昇志向が面白かったです。 王国への道 遠藤周作 新潮文庫(2019年8月5日発行)山田長政が日本からアユタヤに渡り、日本人の傭兵隊長からタイの南部の藩王になり、失脚するまでの人生を、日本人バテレンの波乱の人生を絡ませながら描いた歴史小説です。東南アジア在留邦人の大先輩の山田長政の足跡がフィクションでも辿れたことはよかったです。 愛と狂瀾のメリークリスマス 堀井憲一郎 講談社現代新書(2017年10月20日発行・初版)タイトルを見た時、現代日本のクリスマスについての社会学的分析と思ったのですが、キリスト教にクリスマスが導入された経緯から始まって、戦国時代末期の日本でのカトリック教会でのクリスマス、そして明治、大正、昭和のクリスマスと目から鱗の歴史書でした。 外国人差別の現場 安田浩一、安田菜津紀 朝日新書(2022年6月30日発行・初版)読んでいて辛くなる本です。善良な人の国・日本にも、外国人を虐待し、食い物にする人がいるだけでなく、入管という役所、日本の法律が外国人を犯罪者として扱い、弱い立場の外国人に、死を含む苦痛を与え続けていることを知り、愕然としました。改善を望みます。 叩かれるから今まで黙っておいた『世の中の真実』 ひろゆき 知的生きかた文庫(2022年6月5日発行・初版)納得できることがたくさん書かれています。特に納得したのは、コロナの感染防止対策に政府もマスコミも満員電車に乗るのを止めようと言わなかったのはおかしいということです。また真面目に努力していれば成功するという事実はないということも納得もしました。 さくら日和 さくらももこ 集英社文庫(2011年6月6日発行)読み始めた時、著者の日常を書いたつまらない本と思いましたが、読んでいくうちに、結構面白くなってきて、さくらももこさんって面白い!と思うようになってしまいました。彼女のお父さんの言動がかなり変わっていて面白いし、幼稚園児の息子も普通なのに面白いです。 翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ!Tel: +603-5638 3001info@sakura.net.myhttp://www.sakura.net.my