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神曲、母恋旅烏、手長姫・英霊の声、小説読本、わが青春の台湾、わが青春の香港

乱読のかけら (2022年5月​)

神曲

川村元気

新潮社(2021年11月20日発行・初版)
歌うカルト集団に入り込んだ夫婦と娘の話です。物語としての構成はきちんとしているし、登場人物の輪郭もはっきりしているのですが、カルトの組織や活動がぼやけていて、カルトの恐ろしさ、特にカルトの指導者たちの野望や悪意が描かれていないのが残念でした。

母恋旅烏

荻原浩

双葉文庫(2019年7月14日発行・初版)
旅芸人の家族の次男として生まれた、少し知恵遅れの青年がメインの語り手になって、家族の仕事や生活の泣き笑いの日々を描いたホームドラマ的小説です。ストーリーは面白いのですが、登場人物の中に、自分を重ね合わせ、共感できる人が見つかりませんでした。

手長姫・英霊の声

三島由紀夫

新潮文庫(2020年11月1日発行・初版)
9編の短編小説が入った本です。表題の2編はそれなりに面白く、また三島由紀夫の文体の素晴らしさも堪能することはできたのですが、それ以外はさらっと読んで終りの所謂短編小説でした。三島由紀夫はやはり長編小説に本領が発揮されているように思いました。

小説読本

三島由紀夫

中公文庫4(2016年10月25日発行・初版)
小説の書き方、小説の読み方、三島由紀夫が推薦する小説の紹介が、1冊にまとめられています。小説は、芸術の中で特に自由な創作が許されているジャンルで、1つの確立した方法論はないと繰り返し主張されているところに、三島由紀夫の独自性と自由を感じました。

わが青春の台湾、わが青春の香港

邱永漢

中公文庫(2021年5月25日発行・初版)
親戚のおじさんの昔話を聞くような感じでこの本を読みました。苦労話や運の良かったことなど、激動の時代の中で、国境を越え、たくましく生きた邱永漢の若い日々に共感しました。しかし東大出であることが何度も書かれていることには少しうんざりしました。

老人支配国家・日本の危機

エマニュエル・トッド

文春新書(2021年11月20日発行・初版)磯田道史他訳
この本はタイトルと内容が一致していません。しかし日本の現在の問題点を指摘する人口学者の論点には納得すべきことが多く、実際にコロナ禍前に書かれた将来予測がそのまま当たっている部分もあり、人口という観点から社会を見ることの重要性を感じました。

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