反対に雇用側の視点にたって、ローカル雇用計画時の留意点を書きます。マレーシアはやはりジョブホッピング（転職）が普通だとされる社会で、これは過去数十年もの間、不変のことだとも言えます。退職を申し出た以上は雇用法の規定で、Notice Period（事前通知期間）の規定を守らせる以外、雇用主はそれを妨げることができません。折角十分な育成をしたり重要なポジションに任命したにも関わらず、本格的な活躍を期待し出した途端に退職を告げられた。日系企業の皆さんもそんな手痛い経験があるのではないかと思いますが、採用は就業開始タイミングが肝要で、スタート時をきちんと握れていれば、予想外の退職はある程度防止できるのではと考えます。新規進出会社等ではついおざなりにしている企業もあるかと思いますが、就業規定を明確にしたハンドブックが事前に整備されているか、その規定に採用者がきちんと納得・安心しているか（一方的ではないか）等が曖昧にされており、継続勤務することに不安を感じた、という離職理由もよく耳にします。告知プロセスのチェックは大事です。

ローカル社員の定着率を上げるための絶対的な手段はありませんが、長年の経験でアドバイス差し上げるとすれば、待遇や就労環境で不満を感じさせる因子がないかどうか、同業他社の水準や職務の与え方等をよく研究して、それらが他社と比較して下回ってないかどうかをリサーチ・把握しておくことは重要です。業界団体やエリアの工業会等にも参加し、他社と情報交換を絶やさず行うのもいいでしょう。もうひとつは、ローカル社員に対しても、明確なキャリアパスを与えることだと思います。目標や評価・昇給・昇格規定を透明化し、与えられたミッションをクリアすればどう報いられるかを提示してあげることも大切でしょう。私が過去経営していた会社では、昇給前のフィードバックと個別面談での軌道修正と方向づけをじっくり行い、評価ポイントをしっかり伝えるとともに、次年度に求めることを明確化しました。これによりローカル従業員のやる気を喚起し、結果的に高い定着率が継続しました。手放したくないキーマンに対しては、社長自らが時間を取り、じっくり話をしてあげるくらいの取り組みがとても重要だと思います。