Hello Malaysia

HAND, FOOT AND MOUTH DISEASE

手足口病

2022年に当地でも大流行した「手足口病」について日本人医師にお話を伺いました。

Q1: 手足口病とはどんな病気ですか?

手足口病とは大抵5歳以下の子どもの間に起こるウイルス感染症です。感染してから3~5日後に口の中、手のひら、足底や足背、臀部等に2~3mmの水泡性発疹が出、熱はあまり高くならないのが殆どです。水泡はかさぶたにならずに治る事が多く、1週間程でなくなり、殆どが軽症で済みます。稀に1~2か月後に手足の爪がはがれる事も有りますが、すぐに新しい爪が生えてきますので、心配いりません。ですが、喉、ほっぺ、舌などにできた水泡がつぶれた後にできる口内炎(潰瘍)が痛く、食事や飲み物を受け付けなくなることから脱水症状を起こす事、皮膚の水泡がつぶれ、そこから細菌が入り皮膚の炎症を起こす事も有ります。そしてごく稀に手足口病のウイルスにより、髄膜炎、脳炎、心筋炎を起こす事も有ります。

Q2: 原因となる病原菌と感染経路について

病気の原因となるウイルスは主にコクサッキーウイルスA16(CA16)、A6(CA6)、エンテロウイルス71(EV71)ですが、その他のコクサッキーウイルス、エンテロウイルスなどが原因になる事も有りますので、何度もかかる可能性はあります。ウイルスは唾液、便、水泡の液にいますので、感染は飛沫感染と経口糞便経路となります。感染した人が咳、くしゃみ、話す事による呼吸器からの飛沫、おむつ交換後に清潔にしていない手でドアノブ、テーブルを触ったり、感染している赤ちゃんがおもちゃをなめたり、また使っている食器など、きれいに消毒しないと数日間は感染力を落とさずウイルスは生き続けるので、そこから感染が広がっていきます。

Q3: 子どもに手足口病の症状が出たら

手足口病の診断を得た場合、元気でしたら無理に寝かさなくても良いのですが、家で静かに過ごし、十分に休ませましょう。口内炎で痛みが生じると食事、水分を取りたがらなくなる事も有りますが、水分だけは意識的に取るように。オレンジジュースなど酸っぱい物ではなく、麦茶、水、イオン飲料水、そして好きな飲み物等を少しずつ与え水分補給をし、普通の食事ではなくプリン、ゼリー、アイスクリームなど、のど越しの良い物を食べさせてあげてください。数日間だけですので、ちゃんとした食事がとれなくても、症状が落ち着けば食欲も元通りになりますので心配いりません。皮膚も細菌が入り炎症を起こすのを避ける為、お風呂は毎日入り、ゴシゴシ洗うのではなく、優しくぬるま湯で洗い、優しく拭き、清潔な皮膚を保ちましょう。

Q4: 治療法は?

手足口病に効く抗ウイルス剤は有りませんので、対症療法となります。口内炎に対して鎮痛薬で痛みを和らげたり、粘膜保護剤のジェル等が処方される事も有ります。皮膚に炎症が起きてしまったら、抗生物質を処方します。

<入院が必要なケース>
❶口内炎が酷く、水分補給が出来ず脱水症状を起こしている場合
❷38度以上の熱が48時間以上続いて、見た感じ重症な場合
❸髄膜炎、脳炎、心筋炎の疑いがある(大抵発疹が出て2日~7日後)
❹他に合併症の疑いが有る場合
❺家でのケアが何らかの事情で行き届かない場合

Q5: 予防方法は?

手足口病の予防接種はありません。感染予防には石鹸でのこまめな手洗いが一番有効です。トイレ後、おむつ交換後、食事の前には手洗いを心掛け、食器、タオルの共有を避ける、咳、くしゃみ、使ったティッシュなどの処理エチケットを心掛けましょう。

Q6: 消毒する場合

汚染が疑われるおもちゃ等は、洗えるものは水と石鹸でよく洗い、そうでない物は次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターなど)大さじスプーン1杯を3リットルの水に薄め、拭いてください。自家製の消毒液使用後のおもちゃは仮に赤ちゃんが口に入れても大丈夫な量ですので、ご安心ください。

Q7: マレーシア政府の対策

手足口病は、政府に届け出が必要な疾患の一つですので、医者は診断を下すと24時間以内に政府機関に報告する義務があります。掛かった子どもの通っている保育園などの責任者は保健所からの指示に従い、先ずは他の子ども達、その家族等に手足口病の人はいないかを調べ、おもちゃ等の消毒をします。保育園では10日間ほど子どもたちに対して症状のチェックを毎日厳格に行い、家でも行うように親に指導します。もし、同じ幼稚園から2人以上の患者が出たらその幼稚園は10日間閉鎖することになります。手足口病との診断を受けた子どもは医者の学校復帰が可能との手紙を持参してのみ、幼稚園に改めて通う事が出来ます。

Q8: 2022年にどうして手足口病が流行したのですか?

手足口病は2~3年の周期で流行り、軽症のケースが殆どで、大人の場合、新たな感染が起きても殆どが発症しないと言われています。2022年にはマレーシアでは10万人を超える過去最大の感染者数となる規模の流行りとなりました。その半分が保育園、幼稚園内での感染、あとの半分は家庭内感染、殆どが6歳以下で、9%が7歳から12歳でした。コロナによるロックダウンで2020年以降、人間の交流が制限され、手足口病を含め、人間同士が接触しないと起こりえない感染症は激減しましたが、こうした制限が解除された途端に、今度は数年間感染せずにいた子どもたちが一斉に感染し、発症するというリバウンド型流行が起きました。コロナにより、遺伝子が変わったなどと騒がれもしましたが、相変わらずCA16、CA6によるケースが殆ど続いてる感じがします。

今回のコロナで私が感じた事は、数多くの感染症(特に風邪)は人類と共に生存しているので、それを全滅させようという働きは、むしろ人間の自然の中での幸せなあり方を奪ってしまうんだという事です。ちょっとは風邪をうつそうが、うつされようが、子どもがのびのびと外で遊びまわり、他の子ども達と自然と接触し、楽しみ、時には喧嘩をし、肉体的、精神的、そして免疫的にも鍛え上げる環境を私はなるべく奪わないようにしたいなと思う限りです。

バラト・よしみ医師
Mahameru International
Medical Centre
+603-2287-0988
www.mahameru.com.my