世界でいちばん透きとおった物語、ギブ・ミー・ア・チャンス、わたしが・棄てた・女、ベートーヴェン捏造、ことばと思考、雑談の一流、二流、三流
乱読のかけら (2024年3月)
世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
新潮文庫(2023年11月15日発行)
「世界でいちばん透きとおった物語」を文字通り期待した私が間違っていました。著者は読者を騙そうとしたのではないと思いますが、ここに書かれていたのは、純愛でもなんでもなく、小説家と編集者のやり取りを中心とした、著者にとっては調べたり勉強しなくても書ける物語でした。
ギブ・ミー・ア・チャンス
荻原浩
文春文庫(2018年10月10日発行・初版)
私が小説をおもしろいと感じた時に思うことは、終わって欲しくない、もっと続けて読みたい、ですが、この短編集にはもっと読みたいと思わせるストーリーがたくさんあり、やはり荻原浩はすごいと思いました。その中でも「押入れの国の王女様」の笑いには共感してしまいました。
わたしが・棄てた・女
遠藤周作
講談社文庫(2012年12月15日発行・初版)
以前の遠藤周作のエッセイで「白痴」という映画の白痴の女と男の運命的な愛について読んだことがありますが、この小説のモチーフはまさに「白痴」と同じだと思いました。カトリック作家の遠藤周作は男女の切っても切れない関係を、神と人との関係になぞっているのかもしれません。
ベートーヴェン捏造
かげはら史帆
河出文庫(2023年11月20日発行・初版)
ベートーヴェンの姿が捏造された、と怒り狂う人々の系譜につながる現代のノンフィクション作家の著作です。私には、どうでもいい、暴いたことで誰の得になるのか、と思うのですが、時間と労力を使っても、真実を明らかにしたいという人がこの世にはたくさんいるようです。
ことばと思考
今井むつみ
岩波新書(2023年10月5日発行)
私の興味のドツボにハマる本なのですが、事例があまりに微に入り細に入りで、読んでいて疲れてきてしまいました。特に全く聞いたことのないマイナーな言語の語彙を説明に使われると、ちょっとお手上げという感じでした。でも言葉が思考に大きく影響を与えることは確認できました。
雑談の一流、二流、三流
桐生稔
アスカ(2020年7月26日発行)
私が思っていることを整理し、図式化、文章化してくれた本という感じがしました。ただいざ雑談を楽しみ始めてしまうと、この人のいう三流の人間の言うようなことを結構話している自分に気づきます。いつも一流の雑談をしようとすると、雑談の楽しみがなくなってしまうと思います。
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