影法師、金正日が愛した女、ブルータスの心臓、地下鉄の友、極小農園日記、嘘つきアーニャの真っ赤な真実
乱読のかけら (2023年12月)
影法師
百田尚樹
講談社文庫(2013年12月5日発行)
テレビドラマのシナリオのような時代小説です。構成がきちんとしていて、少しずつ真相が見えてくるところが王道を行っています。ただ哲学や思想、信念というものがこの小説の裏にあるかというと、それはほとんど感じられず、あくまでもエンターテイメント小説だと思います。
金正日が愛した女
落合信彦
ハルキ文庫(2011年10月18日発行・初版)
ノンフィクションのような小説です。金日成はもともと別人が成り済ましたことは歴史的事実のようですが、金正日も影武者がある時から演じていたとの設定を軸にして、実際に北朝鮮で起こった歴史を書いているので、小説全体が事実のように読めてしまうのがすごいです。
ブルータスの心臓
東野圭吾
光文社文庫(2009年6月20日発行)
何度も想像を裏切られる複雑な構成は、さすが東野圭吾です。しかし人物の性格にはかなり極端な設定があり、韓流ドラマの荒唐無稽な人物設定の先駆けのように思いました。金持ち、特に娘が威張り腐っていて、傲慢で、社員が奴隷のように卑屈な状況は日本にあるのでしょうか。
地下鉄の友
泉麻人
講談社文庫(1995年4月14日発行)
私がまだ日本を出る前の40年近く前の電車の中の様子が描かれています。私も国鉄で神戸の摂津本山から三ノ宮まで通勤していたので、通勤電車で感じたことと同じようなことが描かれていると思いました。今は乗客のほとんどがスマホで時間を潰しているのだと思います。
極小農園日記
荻原浩
毎日文庫(2021年4月30日発行・初版)
私は荻原浩の小説のファンですので、このエッセイ集も買って読んでみました。期待した通り、小文に書かれた内容は読んでいて気分がよくなります。小さな庭に色々な野菜を植えて、世話をする作者の心の動きについつい共感してしまいます。私も極小農園が欲しくなりました。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里
角川文庫(2012年5月10日発行)
帰国子女の書いた体験談風小説です。冷戦中の東欧に日本共産党から出向していた党員の娘の話で、共通語がロシア語という特殊な状況設定ですが、私にはとても親しみやすい物語でした。今はあまりにグローバル化されすぎて、海外に住む意外性は半減したように思います。
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