Hello Malaysia

香港陥落、海の史劇、小泉政権 非情の歳月、失われた地図、日本人が知らない幸福、

乱読のかけら (2023年4月​)

香港陥落

松浦寿輝

講談社(2023年1月11日発行・初版)
演劇の舞台の設定のようないくつかの場面でストーリーが展開し、それぞれの年代の世の中の状況が登場人物を通してうまく表現され、退屈することはありません。しかし人名や食べ物、芸術などに、事実に反することやあり得ないと思われる設定や記述が見え隠れします。

海の史劇

吉村昭

新潮文庫(2004年2月20日発行)
吉村昭のことを「調べて書く作家」と見下した評論家がいましたが、彼ほど調べた史実を生き生きと語れる作家はいないと、この本を読んで再確認しました。日露戦争の日本海海戦前後の歴史を克明に綴ったこの小説は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」と匹敵する史劇本です。

小泉政権 非情の歳月

佐野眞一

文春文庫(2006年8月10日発行・初版)
この本で最初に取り上げられている小泉元首相の秘書だった飯島勲さんとは一緒に仕事をしたことがあるので、興味を持って読んでみました。この本には私の知っている飯島さんとはかなり違った飯島さんが登場していて、この著者の小泉政権への悪意を感じました。

失われた地図

恩田陸

角川文庫(2019年8月25日発行・初版)
霊の世界が垣間見える小説です。ストーリーは荒唐無稽のはずなのにイマイチ徹底できず、全般的に平凡で、登場人物にも魅力がなく、気持ちが悪くなるような描写もあり、好きにはなれませんでした。多作の恩田陸の作品の中ではおそらく駄作の1つであると思います。

日本人が知らない幸福

武永賢

新潮新書(2009年9月20日発行・初版)
日本に帰化したベトナム人医師の書いた本です。タイトルと本文は違っていて、本文には「幸福」に関しての記述がほとんどありませんでした。むしろ著者の不幸な生い立ちや不幸な人の話が多く書かれており、何が日本人の知らない幸福なのかはよく分かりませんでした。

宗教を『信じる』とはどういうことか

石川明人

ちくまプリマー新書(2022年11月10日発行・初版)
第一章を読んだ時、「これぞ私の疑問に答えてくれる本だ」と思いました。しかし第二章からは、著者が自ら設定した設問にきちんと答えず、のらりくらりと、古今東西の哲学や神学を引っ張ってきて、回答を試みただけの、見事に失敗した神学の解説書になっていました。

翻訳&通訳なら桜コンサルタント社にお任せ!
Tel: +603-5638 3001
info@sakura.net.my
http://www.sakura.net.my