Hello Malaysia

pradcol創業20年超の実績を誇るStep1Malaysiaの代表取締役社長であ

INTERVIEW

Step1マレーシア
代表取締役社長
中村 直輝さん

1994年に日系電機メーカーの駐在員としてマレーシアでの生活を始め、2001年に「Step1マレーシア」を起業。MM2Hビザ取得サポートやマレーシア生活に関わるあらゆるサポート、当地の保険会社の代理店業務、資産運用、当地での遺言書作成のアドバイスなどを幅広く行なっています。より良き「相談者(社)」になることがモットー。

創業20年超の実績を誇るStep1Malaysiaの代表取締役社長である中村直輝氏。今回パノーラは、本誌掲載の同社コラムの最終回を記念して、同氏にインタビュー。当地で生活する上で、知っておくべき金銭的なリスクや具体例、対処法について、編集ようこがお話を聞かせていただきました。

“誰しも、自分が突然亡くなること等考えていないでしょうが、その可能性は誰にでもあることをまずは認識することが大切”

編集ようこ(以下パノーラ):御社は、政府公認のMM2Hビザの取得や保険の加入のサポートを長年されていますが、在マされている日本人の方々と長年関わる中で、中村さん自身、外国人として知っておくべきリスクについての重要性を感じているんですよね。

中村さん:そうなんです。4月に国境が開き、現地採用や駐在員として、また、MM2Hを取得してマレーシアでの生活を始められた皆様もたくさんいらっしゃるかと思います。マレーシアへようこそお越しくださいました。

これからの毎日が、楽しく充実したものになることが最高なのですが、慣れない土地で生活する上で、万が一に備えることも大変重要だということを、様々な日本人のお客様と関わる中で日々感じます。特に、お金に関することについては、事前に知っておくべきことがたくさんあるかと思いますので、今回はそれについてお話させていただきます。個々人の方にも、また、経営者のお立場の方にも少しでも参考になればと思います。

パノーラ:まず考えられるリスクの一つに、病気やケガがありますね。クレジットカード付帯の海外旅行保険があったり、勤務する会社で保険に入っている場合は、それ程心配無いように思うのですが。

中村さん:クレジットカード付帯の海外旅行保険は、あくまで「海外旅行」で起こり得る軽度の病気やケガのための保険。ある時私のクレジットカードを調べてみたら、保証限度は50万円でした。でも、先日軽度の心筋梗塞にかかった私のお客様Aさんの場合ですと、入院や治療に日本円で400万かかったそうです。幸運にも、当地の掛け捨て型保険に入っており、限度額ギリギリだったようですが保険でカバーできたんです。一方、当地で重度の心筋梗塞になったBさんの場合は病状が重く、日本に帰国して治療ができるまでに1カ月半かかりました。その間、当地でかかった入院治療費は1,400万円。保険未加入だったため、大変な負担となってしまったんです。

パノーラ:会社の保険があっても、プライベートでのケガ等の場合はカバーされないことも多いのですよね。

中村さん:場合にもよりますが、勤務時間外でのケガですと、個人負担になるケースも多いですね。週末のサイクリングで複雑骨折をされたCさんの場合、約1,000万円程の治療費がかかったそう。Cさんは、会社が一時的にお金を負担してくださったようですが、最終的にはご自身で支払わなければならなくなりました。やはり、自身で保険に加入することが大事になってくるわけです。

パノーラ:当地において、個人で医療保険に加入する場合、どんな選択肢があるのでしょうか。

中村さん:
マレーシアの医療保険は、全てが入院保険ですから、風邪等の通院は適用外です。医療保険には、「掛け捨て型」と「生命保険付保型」の2種があり、前者は保険料が安く、後者は死亡保障がつく反面保険料は高くなります。「掛け捨て型」の場合、医療費の保障が「生命保険付保型」よりも低くなります。

“マレーシアで万が一死亡した場合、相続手続きを迅速に進めるには、公的な遺言書が必要”

パノーラ:当地で生活する上で、万が一の場合も考えておかなくてはいけないですよね。

中村さん:ポイントになるのが、当地で作成された「遺言書」です。マレーシアでは、本人の死亡を確認した時点で金融機関が即、お亡くなりになった方の口座を凍結し、以降は当地の相続法に則って高等裁判所の許可を得て初めて相続が可能となるために、預金引き出しやローン返済も出来なくなります。また、たとえ共同名義の場合でも、一部の外資系銀行(HSBC等)以外は同じように口座凍結が行われるため注意が必要です。マレーシアでの相続手続きは、Distribution Act 1958という相続法に則って手続きを行う必要があり、完了まで長期間にわたる様々な手続きがあります。当地の資産に関しては、当地で作成した遺言書のみが公的遺言書と見なされ、海外で作成された遺言書は適用外。口頭遺言やメモ遺言は、遺言とはみなされないのです。

パノーラ:遺言書というと「お金持ちの方が作るもの」というイメージがあります。

中村さん:マレーシア人の方は、相続手続きの大変さを知っているため、資産額や地位に限らず一般的に遺言書を作成されている方が多いのですが、外国人である我々の場合、重要であることを知らない方も多いのが実態です。ここで簡単に、作成について説明しておきましょう。

【遺言書作成が出来る場所】
❶ 信託会社(政府系のAMANAH RAYA銀行系のPB Trustee serviceや独立系のRockwill等)
❷ 弁護士事務所

【遺言書の種類】
ベーシック遺言書
駐在員を含む一般の方にお勧めの遺言書。内容はシンプルで、マレーシアにある全資産を誰に何%相続するという内容(例:妻90%、長男5%、長女5%)。全資産が対象のため、資産内容の変更時にも書き換えは不要。

コンプリヘンシブ遺言書
複雑な資産分配を行う際に適しているため、自営業者さん、会社のトップの方、複雑な資産を持つ投資家の方等に適した遺言書。

パノーラ:例えば、編集ようこが遺言書を作成する際に、どの位の費用がかかるのでしょうか。

中村さん:ベーシック遺言書をAMANAH RAYA銀行で作成する際はRM500、コンプリヘンシブ遺言書であればRM1,200です。弊社にご依頼いただく場合、別途サービス代が加算されます。

“当地の会社経営者として、日本人を含む外国人社員全員の「遺言書作成」をマストにすることを考えることも必要では”

パノーラ:中村さんはこれまで、在マ日本人駐在員に万が一のことがあり、その会社が社員の方の死亡後の相続手続きをするのに苦労されたのを何度も見てこられましたよね。

中村さん:そうですね。個々人に遺言書がないと、死亡した社員の相続手続きをするのにも会社が一苦労するのです。ですから、当地の会社によっては、全外国人社員の遺言書作成をマストにしているところもあります。例えば、新しく駐在員さんがいらしたら、銀行開設等と一緒に遺言書作成をしてもらう、という流れにするとスムーズですし、会社が費用を負担することを考えても良いかもしれませんね。いざという時のことを考えると、会社として、そこまで責任を持つべきだと個人的には考えます。

パノーラ:遺言書作成以外にも、会社として、保険に加入することで、福利厚生を充実させることができる例もあるそうですね。

中村さん:例えば「デング熱保険」が例として挙げられます。社員がデング熱にかかったら、社員は会社を休まなければならず、会社としてその分損失もあるわけです。一人当たり年間約RM30の掛け金ですが、もしかかった場合、感染が分かった時点でRM3,000の保険金が入るものがあります。

パノーラ:御社では、全従業員の方の「デング熱保険」を会社で加入されているんですよね。

中村さん:はい。デング熱の感染の確率は非常に低いものではありますが、福利厚生の一部として加入しています。会社で加入していると、その保険金は会社に入りますし、税控除の対策にもなるのです。社員と会社、両方へのメリットになりますので、会社トップの皆様もぜひ考慮されてはいかがでしょうか。

今回ご紹介した保険や遺言書作成、その他、マレーシア生活における様々なご相談は、同社(step1malaysia@gmail.com+6012-208-1131/日本人直通)までご連絡ください!