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BUSINESS TAXES

ビジネスに関する税金

マレーシアでも、日本と同様に法人税の申告・納税が必要です。

法人税の制度概要

日系企業のマレーシア現地法人を含め、企業がマレーシアで事業を行うと、日本と同じように法人税の申告・納税を行う必要があります。法人税の申告を行う前段階として、会社は財務諸表を作成し、会計監査を受ける必要があります。日本では、会計監査を受ける会社は上場企業など一部の会社だけですが、マレーシアでは小規模の会社を含め、原則すべての会社が会計監査を受けなければなりません。各会社は、毎年期末日から6カ月以内に、監査を受けた財務諸表を株主に提出する必要があります。

そして法人税の申告書は、期末日から7カ月以内に内国歳入庁(IRB)に提出する必要があります。ただし、電子申告であれば例年1カ月の延長が認められており、実質8カ月以内に提出になります。日本では法人税申告書提出期限は2カ月以内(申請により通常1カ月延長可能)ですので、マレーシアは随分ゆっくりしていると言えます。

他方、法人税の納付に関しては予定納税の制度があり、当年度の2カ月目から12カ月にわたり、当期の法人税を毎月前払いしていく必要があります。前払いする金額は当年度開始前に会社が自ら決定しますが、期末後に提出する法人税申告書の確定税額に比べて30%以上の不足が生じている場合は、ペナルティが発生します。かといって先に払い過ぎた場合は、還付金がなかなか戻ってこないため、どの程度の金額を前払いしておくかは悩ましいところです。実務上は、期中6カ月目と9カ月目(2024年課税年度からは11カ月目も)に前払いの金額を修正できますので、その機会になるべく最終税額に近くなるように修正しておくことが重要になります。

税率と所得計算

さて、マレーシアの法人税率は(17%の軽減税率が適用されるマレーシア資本の一定の中小企業を除き)24%です。毎年の法人税を算出するにあたり、財務諸表の税引前利益を出発点として税務調整を行い課税所得を算出する点は日本と同じです。

少し専門的な話になってしまいますが、日本と異なる特徴的な税務調整項目としては、事業開始前の費用は損金不算入、期末に未実現の為替差損益は損益不算入、の損金算入制限などがあり、こうした知識がないと、税額の予測を誤ることになるため注意が必要です。また、固定資産に係る会計上の減価償却費は全て否認され、別途税務上の償却計算を行うことになります。特に建物については、「産業用建物」に該当しない建物、たとえばオフィスや商業施設などは税務上償却できません。こうした税務計算は、タックスエージェントに委託する場合がほとんどです。

近年の特徴❶
優遇税制とグローバルミニマム課税

従来、マレーシアでは1986年投資促進法のもと投資誘致のための優遇税制を用意し、実際、製造業を中心に日系企業の多くも、そうした優遇税制を享受してマレーシアに進出してきました。近年は、製造業向けの投資税額控除(ITA)や免税(パイオニアステータス)の優遇措置において会社に課す諸条件が厳格化されてきています。また統括機能を持つ会社やIT企業向けの優遇措置でも、従業員数、給与、事業経費などの面で要件が厳格化され、簡単には優遇税制を利用しづらくなってきています。

また、OECDが主導するグローバルミニマム課税(国ごとに最低税率15%までは課税する国際的な制度)が、マレーシアでも2025年1月1日以降に開始、事業年度から導入される予定です。制度の詳細は複雑ですが、簡単に言うと、一定の売上高を持つ多国籍企業グループのマレーシア子会社が免税等の優遇税制を利用する場合でも、15%までは法人税を課税されることになります。マレーシア政府としては、優遇税制以外の投資誘致策を考え直す必要がある状況になってきていると言えます。

近年の特徴❷
e-invoice制度

マレーシアでは、e-invoiceの制度が段階的に導入されます。導入遅延の可能性はあるものの、事業者としては遅かれ早かれ制度対応が必要になります。執筆時点では、各事業者の2022年度の売上に応じて、以下の導入時期が示されています。
・売上RM1億以上の事業者:2024年8月1日から。
・売上RM2,500万からRM1億未満の事業者:2025年1月1日から。
・その他の事業者:2025年7月1日から。

マレーシアのe-invoice制度の主な特徴は、以下の通りです。
・官民にまたがる制度であり、事業者が顧客に請求書を発行するに際して、請求に関するデータを
必ずIRBに送信する必要があります。制度の前提として、データの送受信のために、IRBが用意するプ
ラットフォームに事業者が接続することが必要になります。
・事業者から送信されたデータは、QRコードで表示可能な形式で、内国歳入庁から事業者に返されます。
・続いて事業者は、当該請求データを顧客に送付します。一般に、既存の請求書にQRコードを付けて顧客に送付することで、e-invoiceを発行したとみなされます。
・上述の通り、事業者側で1つの取引に対して2回のアクションが必要となり、理想的な仕組みではありません。将来的には改善が期待されますが、当初はこのような形での制度開始となります。
・それでも国がこのような制度を導入するのは、事業者の取引の全貌を把握しやすくすることにより、不正の防止や徴税の強化を図る狙いがあります。

その他の税制

マレーシアで事業を行うと発生する他の税制としては、SST(売上税およびサービス税の総称)、関税、不動産利得税(RPGT)、印紙税(StampDuty)等があります。また雇用主には、毎月の給与に係る所得税の源泉徴収・納税義務もあります。
関税については、日系企業では税関まわりの業務を物流担当者に任せきりで、日本人の財務責任者の目が行き届いていないことも多いようです。この場合、免税条件の遵守に不備があるにもかかわらず免税を適用している等、後で税務調査で問題が発覚し追徴課税が生じるような例も散見されます。

※RM1=31円

佐藤 祐司さん
PricewaterhouseCoopers Taxation Services Sdn. Bhd. (464731-M)
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