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フンボルトの冒険、近代と現代の間、義のアウトサイダー、超・殺人事件、恋のゴ

乱読のかけら (2021年6月​)

フンボルトの冒険

アンドレア・ウルフ

NHK出版(2017年1月30日発行・初版)
鍛原多恵子訳
フンボルトの「コスモス」に高校生の頃に魅了され、私が生徒会長を務めた高校の生徒会広報の名称を「コスモス」としました。その後フンボルトはご無沙汰でしたが、この本を読んで、フンボルトの人柄と生涯がよく分かり、かつ彼の冒険は中南米とロシアだけだったことも分かりました。

近代と現代の間

三谷太一郎対談集

東京大学出版会
(2018年7月20日発行・出版)
対談で語られている内容が昔の話で、しかも関係者にだけ楽しい内輪の話の色彩が強いのが少し鼻につきました。近代と現代の間というタイトルのテーマそのものの議論がほとんどないのも、看板に偽りありです。1つの発見は、昔は思想家が政治に大きな影響を及ぼしたということです。

義のアウトサイダー

新保祐司

藤原書店
(2018年11月10日発行・初版)
タイトルと内容は少し違っているように思いますが、内村鑑三の果たした役割、信時潔の音楽に関しては、知っていたこととは違った新しい見方を学ぶことができました。特に音楽家としての信時潔と、彼の「海ゆかば」と「海道東征」の再評価は的を得た、素晴らしいものだと思います。

超・殺人事件

東野圭吾

角川文庫
(2020年1月25日発行・初版)
今まで読んできた東野圭吾のミステリーに比べると、かなり手抜きで、何も調べずに、アイデアだけで小説を書いたという感じが否めない短編集で、少し残念な気持ちになりました。しかし自虐的というか、高齢の同業者のこき下ろし方は、それなりに面白く、漫才のネタになると思います。

恋のゴンドラ

東野圭吾

実業之日本社文庫
(2019年10月15日発行・初版)
スキー場を舞台にしたラブコメディーです。ミステリー物に比べるとかなりレベルが低く、視聴率のパッとしないテレビドラマという感じです。登場人物がもう少しくっきり描かれていると感情移入ができたのですが、紋切り型の人たちばかりで、サラっと読んでお終いの本でした。

スパイの妻

行成薫

講談社文庫
(2020年10月7日発行)
筋は面白い、しかし小説としての書き方がイマイチでした。しかし戦前ペストを生物兵器として使うことを計画した日本軍とその情報をアメリカに届けようとするスパイの動きは、コロナの時代の今、どこかの国の陰謀を暗示しているようで、興味深く読むことができました。

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