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pbcol音に聞く、沈黙の王、十二人の手紙、草花たちの静かな誓い、また、桜の国で

乱読のかけら (2020年7月​)

音に聞く

高尾長良

文藝春秋(2019年11月20日発行・初版)
哲学的な語彙を多用して、音楽のことを表現しようとした小説だと思います。私にはそれは失敗していると思いました。使用されている語彙が文脈の中でしっくりしていない部分が散見される。著者がこの本で何を描きたいのか分からない。何より小説として筋があまりにもつまらない。

沈黙の王

宮城谷昌光

文春文庫(2017年7月10日発行・初版)
中国の古代の物語は、舞台の設定がシンプルになるので、普通はあまり面白みがないと感じますが、この短編集は、面白さの焦点が絞られていて、エンターテインメントとしても決して悪くはないと思いました。そして著者の漢文書き下し調の文体がなんとも心地よく感じました。

十二人の手紙

井上ひさし

中公文庫(2020年1月30日発行)
やっぱり井上ひさしは天才でした。最高です。こんなに面白い短編小説集にはなかなかお目にかかれません。どんでん返しこそが物語を読む楽しみと私は常々思っていますが、その意味ではこの本は全てにどんでん返しが仕込まれていて、読む人を思い切り楽しませてくれます。

草花たちの静かな誓い

宮本輝

集英社文庫(2020年1月25日発行・初版)
まず4200万ドルの遺産相続で読者はこの小説に引きつけられます。そして従姉妹に起こった事件の真相が明らかにされていく中で、ハラハラ感を味わい、最後にハッピーエンドです。スリル、期待、興奮、感動を味わいたいなら、全ての要素が揃ったこの本はイチオシです。

また、桜の国で

須賀しのぶ

祥伝社文庫(2019年12月20日発行・初版)
とても面白い本です。ナチス・ドイツに侵攻されたポーランドのワルシャワを舞台にした日本人外交官の活躍の物語です。主人公の白系ロシア人の父と日本人の母の間に生まれた日本の外交官のような人が、実在したかどうかはわかりませんが、日本のためにいて欲しいと思いました。

ショートショートの宝箱

光文社文庫編集部

光文社文庫(2019年6月25日発行)
アメリカでは通勤途中に電車で短編小説を読むのが流行した時代があったと聞き、私も移動の時に読もうと思い、この本を買ったのですが、これは宝箱ではなく、玉石混交箱、それも玉の少ない短編小説集でした。物語は荒唐無稽すぎても興醒めするし、現実的すぎてもつまらないと思いました。

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