pbcol大名倒産、危機と人類、大黒屋光太夫、バビロンの秘文字、ストックホルムの密使
乱読のかけら (2020年6月)
大名倒産(上・下)
浅田次郎
文藝春秋
(2019年12月10日発行・初版)
膨大な借金を抱える大名家を継いだ側室の子の若殿が、様々な困難に立ち向かいながら、財政を立て直していく波乱万丈の物語です。若殿の純朴さ、先代の大殿の多重人格など、登場人物の設定が奇抜ですが、決して荒唐無稽さや性悪説が感じられないところが、浅田次郎の良さだと思います。
危機と人類(上・下)
ジャレド・ダイアモンド
日本経済新聞出版(2019年11月8日発行)
小川敏子、川上純子訳
日本を含む7カ国の危機、つまり国難に関する研究で、内容は実に興味深く、素晴らしいと思いますが、全体的に上から目線で書かれた本であると感じてしまいます。また日本に対する事実認識がかなり前時代的リベラルな偏見に満ちていて、読んでいて随所で不快感を感じました。
大黒屋光太夫(上・下)
吉村昭
新潮文庫
(2005年6月1日発行・初版)
高校生の頃、井上靖の「おろしや国醉夢譚」を読んで、大黒屋光太夫と一行の漂流とロシア滞在の物語に興奮しましたが、この本で再度興奮と感動を味わいました。光太夫たちが帰国してからの研究が反映され、井上靖の小説より明るいエンディングになっているのがいいと思いました。
バビロンの秘文字(上・下)
堂場瞬一
中公文庫
(2019年1月25日発行・初版)
スウェーデン、デンマーク、ドイツ、日本、イラクを舞台に、フリーのカメラマンの主人公が古代文書の研究者の恋人を救出するために奮闘するサスペンスです。この長い小説の中で、私は天才日本人少女がバビロン文書を解読するところがとてもスリリングで面白いと思いました。
ストックホルムの密使(上・下)
佐々木譲
新潮文庫
(2009年3月20日発行)
第2次世界大戦中のストックホルムを舞台にした情報戦を担った人々の手に汗握る物語です。この小説で注目すべきことはメインの登場人物のキャラが好感度抜群ということです。もし日本の上層部がこのような人たちの努力を正当に評価していたら、日本は変わっていたと思います。
怒る富士(上・下)
新田次郎
文春文庫
(2007年9月10日発行・初版)
新田次郎の山岳小説には中学生の頃、夢中になり、読み漁ったことがあります。この本はどちらかというと歴史研究的な要素が強い小説です。登場人物が歴史の中で翻弄される様子はよく描かれているのですが、他の山岳小説のような感動と興奮を誘う部分が少ないように思いました。
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